外国人技能実習生の受入れ
協同組合における外国人技能実習生の受入れ
ここでは、協同組合で外国人技能実習生を受け入れるケースに特化してご案内いたします。
いくつかのカテゴリーに分類して必要な条件等をご説明いたします。
手続き面
1.組合の定款の事業の項目に「外国人技能実習生の共同受け入れ事業」が入っていること
これは、特に説明の必要がないと思いますが、その事業を行うのであれば、定款にそれが記載されている必要が あるというものです。
2.監理団体として技能実習機構の許可を得ていること
ご存知のとおり、平成29年11月から新しい技能実習法のもと、外国人技能実習機構(以下、「機構」といいます。)の許可を得ませんと、事業協同組合としては新規の受け入れや資格変更ができなくなりました。なお、従来は職業紹介事業所としての届出が必要でしたが、今後、それは必要がなくなりましたし、無料職業紹介しかしていなし事業所は廃止の届出をする必要があります。
3.実習実施機関(受け入れる会社)も機構に届出ること
実習実施機関についても機構に実習実施者として届出をし、技能実習計画について認定を受ける必要があります。
事務局等の体制(機構の許可を得るための主なもの)
1.技能実習を行うのに必要な事務所を整えていること
技能実習を行うための必要条件を、事業を行う事務所が具備していなければなりません。
2.定期巡回指導、監査(外部監査)の体制が整っていること
外国人技能実習生を受け入れた組合(監理団体)は、受入れ企業に対して、毎月1回の定期巡回指導と3箇月に 1回の監査を行い、監査については、地方入国管理局に書面で報告をしなければなりません。この定期巡回指導や 監査ができる体制を整える必要があります。特に監査は、原則として組合の監理責任者の指示のもと行うことになっていますので、 それができる責任者を配置する必要があります。また、新しい法令によれば、外部監査人又は外部役員による監査も必要になってきます。
3.技能実習計画の作成指導者がいること
外国人技能実習生を受け入れは、技能実習計画というものを作成し、その計画に沿って行われるべきものですが、 この作成者指導者になるには一 定の条件が必要です。例えば、受け入れようとする職種について、「5年以上の実務経験がある」等の条件がありま す。
4.技能実習生の相談体制ができていること
外国人技能実習生は、送出し国においてある程度の語学の研修はして来ていますが、十分ではありません。そん な実習生が祖国を離れ生活していると、いろいろとトラブルや悩みも抱えます。そのような時に監理団体が対応で きるよう母国語が話せるスタッフを何らかの形で手配することが大切です。
5.財産的基礎があること
実は、この基準が一番お問い合わせが多いのですが、逆に明確でない部分でもあります。少し実績が出てきたらご案内したいと思います。
受入れ企業の体制
1.技能実習指導員がいること
外国人技能実習生は文字通り「実習生」であり、日本の技術などを学びに来ている云わば「学生」さんです。そ の学生さんに技能を伝授しなければならない訳ですが、その指導員になれるのは、受け入れようとする職種につい て、「5年以上の実務経験」が必要になります。ですから、起業したての会社で、まだ経験が浅いスタッフしかいな いような企業では、実習生を受け入れることはできません。
2.労働関係法令、社会保険諸法令を遵守していること
これは、なにも外国人技能実習生を受け入れる企業に限ったことではありませんが、これを遵守していただけな い企業には外国人技能実習生を受け入れさせてはいけません。組合(監理団体)についても不正行為が問われる可 能性が出てきます。
特に注意が必要なのは農業です。農業については、日本人の場合、労働基準法の規定が一部適用されないのです が、外国人技能実習生については労働基準法の適用もしっかりあり、例えば時間外労働についての割増賃金の支払い等も必要になります。これを誤解していると大きな過ちを犯すことにもなります。
人数枠と協同組合が監理団体となることのメリット
外国人技能実習生は、企業の規模(常勤従業員数)により受け入れられる実習生の数が、常勤従業員数の1/20以下と決まっています。しかし、協同組合(中小企業団体)の場合には「特例人数枠」というものがあり、下表のとおりとなっています。特に有利なのは、30人以下の従業員しかいない会社でも3人まで受け入れることができるということです。
ただし、常勤従業員数を超えることはできません。つまり、常勤従業員が3人いれば3人受け入れることができますが、常勤従業員数が2人でしたら、2人までしか受入れられません。ただし、この人数枠は原則として技能実習1号の人数枠です。
実習実施機関の常勤従業員総数 | 技能実習生の人数 |
301人以上 | 常勤従業員総数の20分の1 |
201人以上 300人以下 | 15人 |
101人以上 200人以下 | 10人 |
51人以上 100人以下 | 6人 |
41人以上 50人以下 | 5人 |
31人以上 40人以下 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
*優良基準に適合する場合は、技能実習第1号の場合で上記の2倍、第2号で4倍、第3号で6倍まで
受け入れることができます。
*技能実習生(1号)の人数が、常勤従業員の総数を超えてはいけません。
※建設業は2019年秋から、特別のルールができました
*常勤従業員には技能実習生の数は含めません
*常勤従業員数は、原則として雇用保険の被保険者数(加入者数)で確認しているようです。
*自動車整備業や介護事業には、技能実習機構への許可申請の時点で特別のルールがあります。
*船上漁業の場合は規定が異なります。
技能実習2号(ロ)
現在の技能実習制度は、技能実習1号(原則1年)⇒技能実習2号(原則2年)という流れになっています。技能実習2号以降へ移行できる職種は限定されています。
詳細はJITCO様のホームページ、(リンク:http://www.jitco.or.jp/system/shokushu-hanni.html)をご覧ください。
この技能実習2号へ移行するためには、当該職種に関し定められた試験に合格しなければなりません。試験は原則として実技と学科が行われます。ここで技能実習生にとっては大きな試練があります。なぜなら学科試験は日本語で行われるからです。日本語の学習が十分でない実習生はこの学科試験でよく不合格になります。試験に合格できなければ「技能実習2号」に移行できませんから帰国するしかありません。ただし、1回に限り追試験がありますから、その試験には万全の態勢で臨まなくてはなりません。
なお、上記の通り技能実習2号に移行できる職種は限定されているのですが、技能実習1号については実は限定がないのです。意外に思われるかもしれませんが、俗に「1年もの」と言われる技能実習生は「技能実習2号移行対象職種」以外で入国しているケースが多いのです。クリーニング業等はその一例です。しかし、何の職種でもいい訳ではなく、単純作業などはその対象から外れているとご理解ください。
技能実習3号(ロ)
平成29年11月から、一般監理団体(優良な監理団体のこと)の許可を得ると、優良な実習実施機関に限り、技能実習2号からさらに技能実習3号として、2年間受入を継続することができます。ただし、3号に移行する前には、1箇月以上本国へ里帰りする必要があります。
3号への資格変更の方法は、3号への認定申請時に決定しておくようですが、令和元年9月から、1箇月以上1年以内に帰国すればいいというように変更されました。なお、一時帰国の期間が3か月を超える場合,地方出入国在留管理局においては,第3号技能実習開始時に、一時帰国するまでの在留期間が決定されます。その場合、一時帰国後の本邦入国は、在留資格認定証明書交付申請を行い、査証を取得して新規入国する必要があります。
技能実習生をめぐるトラブル
既述のとおり技能実習生は研修(実習)に来ている訳ですが、 人間である以上、毎日生活していればトラブルに巻き込まれたり、 自らトラブルを起こす実習生もいます。技能実習生をめぐるトラブルを簡単にご紹介します。それぞれ事情があることですから、客観的に事実のみを記します。
1.失踪
外国人技能実習制度においては、最もポピュラーなトラブルです。突然、技能実習生が姿を消してしまうのです。
「行方不明報告書」を機構に提出しなければなりません。
2.喧嘩などの暴力
実習生同士のトラブルではこれが多いかもしれません。実習生同士の喧嘩なら上手に和解させるしかありませんが、実習実施機関の人間が技能実習生に暴力を加えると不正行為になります。
3.不法滞在者等との交流
最近は、技能実習生もSNSを利用したりして、母国出身の方々と連絡を取り合っているケースが多いのですが、 そこで不法滞在者等と知り合ったりするケースも多く、不適切な交流を持ってしまったり、犯罪に巻き込まれたりするケースが散見されます。
まとめ
外国人技能実習制度は民間レベルでの国際貢献事業ですが、それを適正に運営しようとすると結構手間もかかります。実務面では技能実習2号又は3号へ移行する際の事務手続きは、スケジュール管理に落ち度がないようにしないといけません。十分な準備ができていませんと、意図的でなくても不正行為を指摘される可能性もあります。
外国人技能実習生の事業につきましては、まだまだご案内したいことも多いのですが、公開できない情報もありますのでご了承ください。
上記のような状況を十分理解した上で事業を運営されることを希望いたしております。
なお、当事務所では、外国人技能実習生の受け入れを予定した協同組合設立につきましては、下記の通りのご案内とさせていただきます。お問い合わせが大変多く、丁寧な対応をするためにもご協力をお願いいたします。
1.最初のお電話でのお問い合わせも、短時間(長くても10分以内で)でお願いいたします。
2.ご相談・ご依頼は、必ず面談相談・カウンセリング(初回相談の場合でも、60分につき6,600円
(税込) *現在は、ZOOM等のオンラインを利用しています。)をお願いしております。なお、
ご相談料は、事前にお振込みをお願いしています。